釈迦のラビリンス

 

見晴らしの良い この丘に立てば

光る海原が 碧く佇むように

出迎えてくれます

 

遠くを行き交う船は 小さな点になって・・・

 

おもいっきり 泣いたことがありますか

おもいっきり 叫んだことがありますか

おもいっきり 笑ったことがありますか

 

一瞬は思いっきり ちぎれてゆきます 

ただの

狡い人間に

成り下がり

そして

黙ったまま

ゆらゆらと

踊りゆくのです

嬉しいことが

あると

すぐわかるわ

鼻の穴が開いて

目が笑っている


あなたは

ほんとうに

よきひと

嬉しい

というのは

期待や予測を超えて

ひとから自分への

贈り物を

受け取った

時なのです

幸福とは

人生で 

かつてなかった

興奮と

生き生きする

瞬間を

与えてもらった

とき


生き生き

とは

ワクワクに

置き換えられます

幸運とは

差別的な

利己益です


幸運の

過ぎたあとには

その匂いと後悔が

残ります

ひとより

恵まれることは

逆境です

負を

消化し

克服することは

美徳であり

至福

なのです

誰も教えて

くれないものがあります

それは

自分の手で

学ばなければ

ならないものです

果てにあるものは

端にあるものです

極限を彷徨うものです


極限の右も左も

一歩踏み出せば

そこには

道があります

超えることは

たやすいことです

けれども

時間や

距離でなく

こころで克服することは

自分に

克たなければなりません


羽があれば

もっと楽に超えられるのに

あなたが

わたしの背中を押す


勇気以外の何かが

わたしに一歩を

向かわせる


愛は

いつも

ひとの想いを

受けとること

知りたくないことまで

教えて下さって

ありがとうございます

わたしは

負の世界で

蘇ります

わたしに

愛を貸してくださいませんか

勇気を貸してくださいませんか

ちからを貸してくださいませんか

あなたを

愛するために

夜明けに出る船は

どこにも着きません

あなたと

わたしを乗せて

ゆれているだけです

ひとつの定規も

ひとつの法則も

ひとつのものにしか

あてはまりません

すべてのものは

計測不能です

絵描きは

皆 ナルシストです

それも本人だけが

繊細と

信じているだけです

極めて鈍感な

ナルシストなのです

ことばを

消すことができなければ

ヒトを消すしかありません

極めて安易な方法は

自分が消えることです

愛は愛より

深く

沈んだものだけが

浮かび上がります

群青の

空に

雲は黄色く

月は金色に

表現する受容器

 

「空に本、手には夢を」

 

(前文に代えて)

言葉は、言霊として「思想」「哲学」だと、

長い間思ってきました。

ある日、ことばが記号であることを知りました。

ことばはimageを想起させ、

形をつくる素材であることを学びました。

絵を描くようになって

ことばは風景になりました。

ことばで描くと、

見える風景があります。

ことばが、

気持ちの風景を

紡ぎます。

 

はじめのメモ

 

とても大切なこと

ワタシのことばは

ワタシ

なのです

ワタシを

表現してくれるのは

ことば

なのです

ことばは

からだの

一部です

 

 

ワタシは病気です

ワタシタチは病気です

 

 

祈りをもちます

宗教をもちません

 

 

煙草を喫いません

酒を呑みません

たにんと競いません

動物の肉片を食べません

 

だから

ゴルフも

競馬も

しません

 

空に本

手には夢

 

見えるものを絵にはしません

聞こえるものを音にはしません

考えることを形にはしません

 

見えるものは絵になりません

聞こえるものは音になりません

考えることは形になりません

 

人間は 思考する 受容器です

人間は 表現する 受容器です

 

「愛の記述」

愛を記述しましょう

素晴らしい 愛

輝いている 愛

煌めいている 愛

 

「逃亡する自由」

ワタシの思考は正しくありません

規範も道徳も歪められているから

ワタシの自由は極少のものです

自由というより放縦という方が

とても近いのです

 

「鄙びた」

情景はいつも枯淡です

情景はいつもモノクロームです

あなたの眼には

どんな情景が映りますか

 

「寛容」

寛容とは

規則を超越し

道徳を裏切り

情愛に反し

条理に背くことです

ある時 寛容は狡いのです

 

「手をつなごう」

手をつなぎ

散歩しましょう

歌いましょう

手紙をかきましょう

夢をみましょう

 

手をつなぎましょう

愛しているなら

 

「桜散る」

春の色に踊れば

涙もふぶいて

花弁になります

 

春の色に踊ぶれば

涙もふぶいて

花弁となりせん

 

祭りには

なつかしき匂いが

祭りの匂いは

いつも

血なまぐさくて

祭りの宵に・・・

 

サドはエロスの

脳を

揉み解してゆく

 

 

ひとが空を見上げると

飛行する鳥がいた

「子規」をほととぎすと読み

「啄木鳥」はキツツキと読む

子規と啄木はうたを詠む

 

 

生活とことばを拾う

いのちと夢を捨てる

 

恋は瞬間の花火

激しく弾け飛ぶ色彩

昇華して やがて燃え尽きる

いのちの爆ぜる音

 

 

ワタシは窮極の偏執狂で

快楽主義者です

世捨の症候群

 

あなたも漂流する時代の検証者です

わたしたちはなかなか自分の立場について

理解できずにいるのです

 

あなたを知ること

あなたに出逢うこと

 

わたしが望んで与えられたもの

自由にならない美

無機質な かたち

 

修飾語、形容詞、修辞法

本質をより不鮮明にする

技術と道具

 

生きている

同じ瞬間はないのです

身体は同じかたちを

二度晒しません

 

 

ありてい

 

ありていと

リアリズムは似ています

リアルは

再現することです

現の個人的なもの

自己の眼差しとしての現

それがありていです

 

 

「駄楽人」

堕落と楽ちん(楽人でも良い)

くっつけて

駄楽人

としてみました

孤独な祝祭について

駄楽人は

提案し続けるのです

 

 

極少な快楽

「不純」「不良」「不道徳」

それは「不法」でも「不自然」でも

良いのです

駄々的な否定、不法者に対して

限りない痺れを感じるのです

極少に異常な友好感を

抱かずにはいられないのです

 

すべての人間が芸術を愛します

すべての人間は天才なのです

個性的な創造者なのです

そして唯一の表現者なのです 

 

小説は嘘です

小説は偽せものです

詩でもなく

美術でもなく

音楽でもなく

種は

芽生えて

表現となります

存在となります

 

文字は記号です

文字は数です

文字は絵を成します


「表現する美」

人間の喜び

その表現の根源に

美があります


ことばは催眠です

唱えれば

呪文になります

繰り返せば

催眠となります


希少なことは

奇異なこと

至高に近づきます


美とは

生活と

生棲の中に

息づいています

あなたの

排尿と

脱糞が

極めて

美となるのです

思考もことばも

カタルシスです

排泄です


「負の遺産」

歴史は王様の記録です

わたしたちは

系譜

と呼びます

生きていたひとの足跡

何を紡いできたのでしょう

何を残してきたのでしょう


靴下

あなたはわたしに

「靴下を裏返しに履いていますよ」

と尋ねました

私は

「これで良いのです」

と答えました


あなたの靴下は

表が靴に接しています

わたしの靴下は

裏が靴に接しています


わたしが

そのことを

足袋に訊くと

足袋は

「あっしの場合、小鉤がありますからね

外が顔と決まっているんでやんす」


あなたは靴に

顔を見せています

わたしの靴下は

足と靴下が

頬寄せあっています

「さて、あなたは靴下を

誰に

見て貰いたいんだい?」



早く走ると

疾るに替わります

走るときは 

 爪先が

身体のどこよりも

一番前に飛び出してゆきます

そして

疾るとき、足は風になります


恋しいことは

慕うことです

慕うことは

傍らに

「寄り添いたい」

と思うことなのです



革命とは 

変わることを意味しません

革命とは

破壊することを

意味しません

革命とは

優しき忘却なのです


革命は

創造を表しません

革命は

嘘をつきません

革命は

悲劇を連れた祭り

なのです


宇宙の卵


わたしたちは

銀河系の端に位置しています

銀河系の中に

太陽の数は

2×10の11乗だけ

あります

宇宙の陽子の総数は

10の79乗以上であって

膨張して増え続けています

つまり

地球上に存在する

砂の数よりはるかに多いのです


その

ひとつひとつに

異なる太陽と時間が存在し

それ以外の

宇宙に時間はありません

わたしたちは

極めて

希少な生物なのです

宇宙に存在する数式で

表わすことのできない卵たち


説明する愛など

似せものです

ことばを重ねる愛は

嘘です

見つめ合い

手を重ねることで

じゅうぶん伝わるのです


ことばを置き換えることを

パラフレーズ

といいます

魂から零れる涙を

詩と呼びます

視たものを

ことばに変えること

絵を詩と置き代えます

交わり


あなたは

訝しいわたしに

誑かされまいとします

訝しいわたし


誑かされる あなた

それが

交わり

ふたりの

つながりなのです


暴力は

道具です

ヒトが手に入れた知性は

暴力です

優しさが

差別であるように


「系譜は時として」

系譜はリリカルな物語によって

語り継がれ

記憶され

記録されない

知の成立なのです


逸れ鳥のように

空を疾ります

屈みこんだまま

踵を剥き出しにした

少女が

土手沿いの巻風の中で

肉を

削いでゆきます


口泡の毒が

食み出して

気持ちのなかの何かが

そう

限られた風景が

狭窄して

やがて

崩落してゆきます


拡張した胃にやってきた

チョコレートは

吐き出され

図書館に並べられてゆきます


ハラッパに風が吹きます

男が横這って

乾いています

傍らのヘッドホンが

セシールしています



「手弱女」

たおやめ

そのことばの

響きが

大好き

たおやか

であることは

美しい 品です


朽ちるもの

折れるもの

倒れるもの

崩れるもの

滅びゆくもの

死せるもの

それは

弱いことでは

ありません


限りなく

美しい女性たち

それはみな

しなやか

なのです

長い睫が

たおやめを

引き立てます


「舐牘」(しとく)

父は

娘を

眺めます

母は

息子を

淫弄します

父は成人した娘を見て

自涜します

母は息子を

胎内監禁します

煩わしい

そのすべてを

感じるとき

性的願望の

忌まわしき


なのです


あなたの瞳に恋して

あなたの足元に平伏すとき

わたしは

あなたの

膕に遜ります

美しき膕は

恒久な愛を育んで

偏奇は

願うことのない

愛への憧れ

ふたりの身体を

削り落として

敬いあいます


病は

人生の

季語

です


崩落する異代


60年と少し前

戦争という人為事故で

多くのひと、魂が失われた

それから、それ以前から

戦争はおわりません

領土は領主のためにあり

国境は貨幣のために画され

退化した知性は戦争を放棄しません

国境を憲法と銃が守ります

海洋国家の国境は見えません

芸術のありていだけが

いつも国境を破綻させています


「幸福論」

あなたは

だれを

労りますか

あなたは

誰に愛されたいのですか

幸福を望むひとは

すでに

不幸の世界に生きているひとです

不幸なひとを慰めるひとは

幸福の世界に生きているひとです


「続幸福論」

幸福とは

苦を持たないことなのです

苦を知らないことは

より不幸なことだけれど

苦を知らない不幸よりは

少し幸福なのです


「新幸福論」

幸福とは

死を評価できる

パラメーターを

もつことなのです